ミサイル防衛は実現不可能?


 最近、アメリカがまたミサイル防衛構想を復活させ、注目をあびている。
ミサイル防衛構想とは、敵の弾道ミサイルを発射直後に衛星などで探知し、自国に落ちる前に迎撃ミサイルを発射して上空で撃ち落とすシステムで、アメリカではNMDやTMD、日本ではBMDと呼ばれている。同じような構想は、レーガン政権や、旧ブッシュ政権でも計画されていて、研究が続けられているが技術的な壁が高く、いまだに実現にはいたっていない。
 しかし、この構想には技術的な壁以前にもっと本質的な問題があるのではないだろうか。

 よく、このシステムは純粋に防衛のためのもので、外国に脅威を与えるものではない、と言われるが、これは大きな間違いである。
 だってそうだろう。もし完璧なミサイル防衛システムが実現できたとしたら、その国は世界を支配できるはずだ。なぜなら、いくらミサイルを撃ち込まれても全くダメージを受けないため、自分は攻撃のし放題。ミサイル攻撃をちらつかせてちょっと脅しをかければ、どんな国も逆らうことはできないだろう。
 こんな恐ろしい物をアメリカに持たせていいんだろうか。

 これに対抗するには相手も同じシステムを完成させるしかないが、そうしたら今度はお互いミサイルで戦うことはできなくなってしまい、このシステムは無用の長物。何も仕事をしないのに莫大な維持費ばかりを食ってしまう、どこかの会社の天下り役人と同じになってしまう。
 それでもミサイルで戦おうと思ったら、まずお互いの防衛システムを攻撃し合い、それから本土にミサイルを撃ち込まねばならないが、それでは今までの戦い方と変わらないんじゃないか。
 もし自分の防衛システムだけが破壊されてしまったら、やられ放題になってしまうため、なんとしてもこのシステムは死守しなくてはならない。しかしそのためには、システムを守るための防御システムが際限なく増えてしまう。

 さらに"湾岸戦争のハイテク兵器"でも採り上げたように、このような高度なシステムを持った兵器はべらぼうにお金がかかる。したがって、飛んでくるミサイルを手当たり次第に撃ち落としていたら、あっという間に財政が破綻する。
 それを防ぐためには、守備範囲を首都近辺や軍事拠点などの重要な部分のみに限定するか、核弾頭を搭載したもののような本当に脅威となるミサイルだけを迎撃し、普通のミサイルは素通りさせるしかない。いったい何のための防衛システムなんだか。
 しかしそうしたとしても、核ミサイルを普通のミサイルと紛れ込ませて攻撃してきたら、いったいどうやって見分けるんだろうか。
 いや、そもそも核の抑止力によって微妙なバランスが保たれている現在の世界で、あえてこれを破って核攻撃をしようという勇気のある国が、いったいどこにあるのか。

 こうして考えてみると、これ一見かっこいい構想のように見えるが、実は問題点だらけじゃないか。 やはり、戦争というのはゲームやSF映画のようにはいかないものなんだな。