悲劇のティラノサウルス
つい先日、シカゴのフィールド博物館で、新しいティラノサウルスの全身骨格が、公開されました。しかし、これはかつて大きな政治的紛争を巻き起こした、いわくつきの化石なのです。
1990年、アメリカ、サウスダコタで、ティラノサウルスの全身骨格が発見されました。この化石はなんと全身の9割の部分が揃っており、史上最もすぐれたティラノサウルスの全身骨格として、一躍有名になりました。
化石はブラックヒルズ地質学研究所という組織が発掘し、Sueという愛称がつけられました。そして綿密な研究が行われ、数々の新発見をもたらし、将来は同研究所の博物館のメイン展示となる予定でした。ところが、この大発見に目をつけた政府が、この化石に対する政府の所有権を主張、警察を動かして、なんとこの化石をはじめ、あらゆる研究データを押収してしまったのです。
研究所は土地の持ち主にお金を払って発掘の許可を得ていました。しかし、政府の主張によると、この土地の持ち主は土地の管理を政府に委託しており、発掘には政府の許可がいるというのです。
当然研究所は納得できず、地元からも抗議がでましたが聞き入れられず、あわれ、Sueの化石は手入れもされぬまま、物置に放り込まれてしまったのです。
そして化石の所有権が、裁判にかけられることになると、さらに土地の持ち主や、彼の所属するインディアンの部族までもが、この化石は自分のものだと言い出し、争いは泥沼化してしまいました。後から所有権を主張した彼らの真意はわかりません。
この当時地元では、この騒ぎを起こした連邦検事は将来、議員になることを夢見ていたので、何か事件を起こして、自分の活躍する場を作りたかったのではないか、などという噂も流れたほどです。結局、研究所は裁判に敗れ、化石は競売に掛けられました。
我々、恐竜ファンにとってはこの素晴らしい化石が、ちゃんとした組織に引き取られ、晴れて日の目を見ることが出来て、ほっと一安心というところです。